×
ESC
フィンテック インサイト

PSD2 – 変更と機会の説明

Worldpayエディトリアルチーム

April 04, 2018

PSD2は決済業界を揺るがすものですが、それはマーチャントや市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか。Worldpayとそこで働くPDS2の専門家であるCharles Damenが、PSD2がもたらす変更と機会について説明します。

PSD2とは? 

2009年、EUと欧州経済領域(EEA:European Economic Area)全体で決済サービスとプロバイダーを規制するため、欧州連合(EU:European Union)における最初の決済サービス指令(PSD:Payment Services Directive)が設計されました。その目的は、消費者保護と決済プロバイダーおよびユーザーの権利と義務を調和させることで、欧州全体の競争を促進し、決済産業を銀行以外にも解放して、公平な競争環境を作り出すことでした。そして行動の変化により、新しいPSD(PSD2)が必要になりました。これは、すべての決済サービスプロバイダー(PSPs:Payment Service Providers)とマーチャントの決済市場に大きな影響を与えることになります。

Worldpayは、規制アクティビティの最前線に立っています。EUおよび英国の規制当局や関係当局、オープンバンキングと密に連絡を取ることで、重要な機会を特定し、変更を活用する方法についてアドバイスを提供しています。ここでは、PSD2に関連する変更内容やニュースについて説明します。

PSD2によってマーチャントに起こる3つの主要な変化:

  1. 口座へのアクセス(XS2A:Access to Accounts)によるイノベーションの増加
  2. 確実な本人認証(SCA:Strong Customer Authentication)によるセキュリティの強化と不正利用の削減
  3. 追加料金の禁止による消費者からの信頼の向上

1. 口座へのアクセス(XS2A:Access to Accounts)

これは、PSD2において最も変革的な要素の1つかもしれません。以前は、銀行口座へのアクセスは、「スクリーンスクレイピング」と消費者セキュリティ認証情報を使用して、アカウントイシュアーまたは規制対象でないプロバイダーに制限されていました。PSD2では、規制対象のサードパーティでも、消費者の同意を得て顧客の銀行口座にアクセスできるようになりました。これによって、マーチャントはデータにアクセスする機会と、決済を開始する機能が得られます。銀行には、このアクセスをサポートするインターフェースを提供することが義務付けられています。

この変更(英国ではオープンバンキングとも呼ばれます)によって、口座情報サービス提供者(AISP:Account Information Service Provider)と決済指図伝達サービス提供者(PISP:Payment Initiation Service Provider)によるサービスに基づく新しい顧客体験と共に、決済業界に大きなイノベーションがもたらされます。たとえば、消費者はすべての口座を一箇所で確認したり、銀行送金でオンライン決済を行ったりできます。銀行送金によるオンライン決済はすでにオランダでは非常に人気があり、カード方式による決済は20%であるのに対し、この方法を使用した決済は56%を超えています1

XS2Aでは、マーチャントに2つの機会が与えられます。1つ目は、銀行データにアクセスすることで、データの洞察ツールの開発が可能になり、マーチャントがよりパーソナライズされたサービスを提供できるようになります。2つ目は、マーチャントはPISPサービスを使用することで、コストと決済取り消しリスクが低い新しい決済手段を提供できるようになります。

2. 確実な本人認証(SCA:Strong Customer Authentication)

2019年9月から、すべての電子決済取引では、3つの方法のうち少なくとも2つを使用して認証しなくてはならなくなります。

  • 知識:パスワードやPINなど、そのユーザーのみが知っていること
  • 所有:トークンや携帯電話など、そのユーザーのみが所有しているもの
  • 固有性:生体認証(例:指紋認識)など、ユーザーの一部

SCA(または2要素認証)は、不正利用の削減を目的としています。ただし、顧客を怖がらせたり、受け付け率を減らしたりすることなく実装することが課題となります。今日の消費者は、AmazonやUberをはじめ、シームレスなエンゲージメントとわずらわしさのない取引に慣れています。

ただし、わずらわしさのない決済の利用体験を維持するのに役立つSCAの特定の免除があります。

  1. 信頼できる受益者
    消費者は、信頼できるマーチャントを銀行にホワイトリスト登録することで、SCAを不要にできます。
     
  2. 継続取引
    消費者が同じ企業に同じ額の定期的な決済を行う場合、SCAは初回の取引についてのみ必要となります。
     
  3. 低額取引
    取引が30ユーロ以下の場合、SCAは必要ありません。
     
  4. 低リスク取引
    リアルタイムの評価を受けた低リスク取引は、SCAなしで処理できます。

リアルタイム不正利用防止対策、行動分析、機械学習の使用は、優れた決済のご利用体験を管理するために重要になるでしょう。

SCAが要求される場合は、最高の顧客体験を提供する上で、間違いなく生体認証が主要な役割を果たすことになります。新しいスマートフォンの60%以上が、指紋センサー、音声または顔認識などの生体認証機能を備えています。さらに、3Dセキュア(3DS:3D Secure)などの一般的な認証方法にも、大きな変化が見られています。新しい3DS2標準は、生体認証の使用をサポートするようになりました。さらに、マーチャントがウェブとモバイルの両方で決済ページの統合を改善することで、顧客の認証体験を向上できる可能性を提供しています。

Worldpayは、リスクと決済の受け付けの両方を管理することで、この新しい環境でマーチャントに最高で最もシームレスな決済のご利用体験をガイドするお手伝いをします。

PSD2に対処する準備はできていますか?

3. 追加料金の変更

以前のPSD規制では、すべての決済手段に対して追加料金が制限されていました。PSD2ではさらに進んで、消費者のクレジットカード、デビットカード、またはプリペイドカードが使用されているすべての決済に対して、追加料金の禁止が導入されています。決済時に予期せぬ追加料金が発生しないようにすることで、マーチャントの透明性が高まり、ひいては消費者の信頼が構築されます。

特定のマーチャントにとって、追加料金は決済処理のコストを転嫁する価格戦略の重要な構成要素でした。しかし、追加料金の禁止によって価格戦略はさらに制限されました。ただし、この追加料金の禁止に対する対処方法はいくつかあり、チャールズ・ダメン氏は「マーチャントは基本的に、商品やサービスのコスト全体に決済コストを含めるか、異なる方法でコストを補うか、最も安い決済手段に割引を適用する必要があることを意味しています」と説明しています。

貴社の事業に禁止規定が適用された場合、Worldpayは利用可能なオプションを特定するお手伝いをします。

PSD2が市場に及ぼす影響

PSD2では、商品やサービスの購入者や販売者の代わりに決済を扱う市場に、多数の変更が行われています。Worldpayは、多くのグローバル市場で 決済を管理するお手伝いをしてきました。 PSD1では、市場は商業エージェントの除外することで要件を回避し、認可決済機関となることができました。しかし、PSD2ではこの除外が変更され、範囲が制限されたため、市場でこの除外を使用することが難しくなりました。

市場が新しい規制に準拠するためのオプションはいくつかあります。最も重要なオプションは、決済機関になることであり、これには多大なコストと運用上および規制上の管理が発生します。2つ目のオプションは、決済や顧客オンボーディングを認可決済機関に外注するなど、市場機能の一部を外部委託することです。

けれども、決済機関になることよりも、はるかに簡単なオプションがあります。サービスの適用範囲とビジネスモデルを見直すと、市場はPSD2の限定された商業エージェントの除外範囲内に収まるので、大きな変更を回避できます。

Worldpayは、お客様の事業に最適なソリューションを見つけるのに役立つ、関連するオプションについてご紹介します。

WorldpayのPSD2チームがどのように役立つのか

一見すると、PSD2の新しく更新された規制は、取り組むべき変更がたくさんあるように思われるかもしれません。しかしWorldpayでは、新しいPSD2規制を機会の出発点とみなしており、お客様の導入をお手伝いできることを楽しみにしています。

PDS2の変更がお客様の事業に及ぼす影響について知りたいですか? PSD2のホワイトペーパーをお読みください。対応のヒントやガイドラインが記載されています。完全な情報をお届けするため、PSD2の進行に合わせて情報を継続的に更新します。

Worldpayの専門家

CharlesはWorldpayの製品戦略のSVPであり、PSD2とオープンバンキングを担当しています。彼は欧州ビジネスの学士号を2つ持っており、20年以上の決済、モバイル、インターネットの経験があります。

1 eコマース決済モニター2015 – G/K

免責事項:この記事は公開時点(2018年4月)の情報の基づいています。